プレゼンテーションでは、話のストーリー(構成)を組み立てて、矛盾がないよう、また、相手に伝わりやすいように工夫をします。これはビジネススキルのコラムでも述べていますが、概ね、以下のような手法があります。
様々な方法がありますが、最も重要なことは、いずれも、 プレゼンテーションの「入り」の部分です。
その「入り」の構成は、①アイスブレークから始まり、②なぜ自分がこれからその話をするのか、そして、③それはこういった結論になりますと、まとめを伝えることです。
導入部分では、どういった話をするのか、そして、それはなぜか、といったことを簡単にまずは伝えます。しかし、それ以上に、心に留めておくことは、「第一印象を取り消すことはできない」ということです。ですから、最初の2分間で聴衆はあなたを評価するのです。
話を聞いてくれている聴衆を味方につけることができるかどうかは、非常に大きなポイントになります。これを「初期エトス」と呼ぶことがあります。これは、コミュニケーションに必要な3要素の一つと言われています。
そもそも、コミニケーションをする上で、ギリシャのアリストテレスが3つの要素を述べています。まず第一に「ロゴス」です。これは、ロジックのことで、計算や理性、ロジカルに話ができているかどうか、わかりやすいかどうかと言うことです。そして2番目に、「パトス」があります。これは、同情(Sympathy)、感情移入(Empathy)といったことで、感情や情念、情熱がこもった態度であるかということです。そして、最後に、最も重要と言われているのが「エトス」です。 これは、信頼のことで、その人の品性、人柄、といったことを含む、いわゆる、受け手に対して信頼されてるかどうか、ということです。
私は、ロジック(ロゴス)や情熱・感情(パトス)よりも、信頼(エトス)が最も重要だと思っています。つまり、聴衆が、あなたの話を信頼して聞きたいかどうか、と思うことです。
そして、この「エトス」には、初期エトスと 最終エトスがあり、初期エトスがいわゆる第一印象です。
この初期エトスが高ければ、時間とともに、このエトスは変化していき、途中で低くなることがなかなかありません。そして、最終エトスが高いと、「またあの人の話を聞きたい」と聴衆は思うのです。
こうした理由で、私は、プレゼンテーションは「入り」で決まると言っているのです。
そして、「誰」が話をするのかがキーとなります。人には蓄積された経験や実績によって信頼が積み重なります。そうしたものがあると、話の重みがあるので、聴衆は聞き入ります。肩書き、大会で優勝した、表彰された、など、聞けばわかるようなバックグラウンドがあれば、信頼はいっそう高まります。しかし、そうでない人の場合は、プレゼンテーションの前に、地位の高い方や有名な方にご紹介を受けることです。
企業の場合は、マネージャーがプレゼンテーションをする場合、その上長が、一言、サポートのメッセージを送ることです。たとえば、「これから田中くんが説明する内容は、当社がこれまで抱えてきた問題を解決できる可能性が高い技術ものです。私もとても期待している技術です。」と言った具合です。そうすることで、参加者の注目度が上がり、初期エトスも高まるのです。
また、結びは、前向きな決意を表すような「未来形」で終えてください。最終エトスを高めて、次回へつなげるのです。たとえば、「今月25日のプロジェクト会議で、本日お話しした技術のデモを行います。素晴らしいもので、この技術を使って問題をぜひ皆さんと解決していきましょう。よろしくお願いします。」と明るく、元気よく終えることです。そうすることで、次回のプレゼンテーション時の初期エトスは高くなり、参加者は興味を持って聞いてくれるのです。