出来るまで1万回でも2万回でも粘り強く指導する


1995年ころです。中国に勤務していた時に、当時、顧問でいらしていた遊佐さんという方に相談したことを思い出します。遊佐さんは、台湾で製造会社の社長を経験されてらっしゃった方で、中国語がとても堪能な方でした。当時の中国の社員はほとんどが国営企業に勤務していたため、近代的な会社組織での経験がありません。

ですから、組織の中では、「命令」、「報告」、「承認」、という手続きで運営されていることを認識できず、自分は良かれと思い、勝手に決めて行動してしまうこともありました。また、マニュアルや ルールを作ってもすぐに忘れて間違いをしてしまい、何度も同じ指導をしていました。

何度も注意して指導するとやはりストレスが溜まり、私はいつもイライラしていました。

その話を顧問の遊佐さんに相談したところ「それはひどいですね。黒木さんほんとに大変です。でも、その人ができるようになるまで何回でも言ってあげることですよ」とおっしゃいました。

 私は、「いえいえ、いえいえ、何回も、何回もすでに話をしているのです。」と話したところ、「それでもできるまで話をしてあげてください。」とおっしゃいました。私はそれでも納得できず「それじゃあ、1万回とか2万回でも注意するんですか」とやや反抗的に言いました。

すると、その時の遊佐さんは、それまでの表情を一切変えず、平然とした口調で「はい、そうです。」とだけおっしゃました。

その言葉に、私は何も反論が出来ませんでした。彼の哲学を感じたからです。相手が出来るようになるまで、粘り強くあきらめずに指導していくことの気構えを感じたのです。そして、そのためには、指導する部下たちに対する深い愛情と忍耐力が必要だということなのです。

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