英語での冠詞の使い方から見る認知の違い

日本語には英語のような冠詞はそもそもありません。冠詞は日本語にない機能ですから、私たちには馴染みもなく、その用法でいつも頭を悩まされる方も多いかと思います。事実、私も、いつも「え〜と、theがいいかな・・・」といった具合で、ネイティブのようにすぐには出てきません。

しかし、なぜ、冠詞のような面倒なものがあるのだろうかと考えることが時々あります。そして、それはきっと西洋人と日本人を含む東洋人が認知する仕方の違いに発するものではないかといつも思うのです。

一般的に、日本人は包括的思考と言って、簡単に言うと、全体をまず認識してそこから関心事や問題ある箇所を特定するという認知の仕方です。一方、西欧では、まず中心となる関心事や問題に焦点を当てて、そこから関連するまわりの事象を紐付けながら認知していくのです。

これを冠詞の話に戻せば、冠詞の用法は、”the”が、特定の「これっ!」といって指差しできるもの、”a”が、たくさんあるうちの一つ、といわれています。ですから、西洋では、まず、目の前のモノ、コト、ヒトについて、特定することから始まるので、ここは、彼らにとっては最も大切な箇所です。なぜなら、それは出発地点であり、そこから、関連する具体的な事象や出来事、人たちに紐付けていく思考法なのです。

日本の場合は、あくまでも、ざっくりとした「その場所」の範囲と概要全体を把握した上で、特定の関心ある出来事やモノ、人たちへ繋げていくのです。日本語では、モノ、コト、ヒトを特定することを後回しにして、まず、全体から入ります。その後に、焦点となる部分へ辿り着くわけです。そして、たどり着いたモノ、コト、ヒトはすでに正体が明らかなわけですから、それらをわざわざ何かで修飾しなくてもすでに明らかなのです。

言い換えれば、日本語の冠詞に当たる部分は、話題の中での背景やコンテクストとしてすでに明らかにされており、それこそが日本語の冠詞にあたる部分なのです。西洋では、これらの背景やコンテクストが不明なまま、まずは、特定されたモノ、コト、ヒトについて先に話始めるので、それらを指図する何かが必要です。ですから、英語では冠詞なるものが大切な意味を持つのではないでしょうか。

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