孤独な子供たち

昭和60年頃、女子社員は午後10時以降の残業が禁止されていました。それは労働基準法で禁止されていたからです。皆さんどう思われますか。これは男女差別ではなく、古くからの日本の慣習として、女性に配慮された決まりだったのです。当時は、女性の身体的なことも考え、また育児もするであろうからこうした法律になっていたのだと思います。この女性の深夜残業は、昭和61年に男女雇用機会均等法の成立でなくなるのです。

では、なぜなくなったか、それは当時、コンビニエンスストアが各地に台頭してきて、お弁当やおにぎりを工場で作るのに夜間も工場を稼働する必要がありました。ですので、労働力が夜間にも必要になったため女性も深夜残業ができるようになりました。

そして、もう一つは、外国からの圧力です。欧米諸国から、ジェンダーの差別をなくし、雇用の機会や昇進を男女平等にするように圧力がかかったからです。そして、この圧力をもとに、男女雇用機会均等法が昭和61年に制定されたのです。

この法律の成立から、女性の社会へ進出するドアが開かれたと言っても良いのかもしれません。しかし、現実は「ガラスの天井」と言われるように、なかなか大変なようで、今なお、女性の管理職割合は欧米と比較して高くありません。2019年のデータですら、世界先進国で最下位で、ランキングは何と167位です。

経済的な理由や外圧の影響で、女性の社会進出を後押しする法律はできたものの、まだまだ、世界から見れば、女性の社会進出は遅れていると言えます。一方で、日本古来からある女性のとしての役割、つまり、家を守り、夫が帰ってくるのを待つ、といった習慣はだんだんとなくなってきました。

◾️子育てへの影響は
それに加えて、若者の都会への進出によって、核家族化が進み、共働き家族も増えています。それらによって、私が懸念していることが幼児への悪影響です。そもそも、1歳から3歳までの幼い頃に保育所に預けられたり、小学校低学年の時に母親がいないことで、孤独感を幼少の時から味わい、情緒的な発達が、時として歪んでしまう人も出てきているようです。

これは、両親や兄弟など肉親が近くにいないため、すぐに、彼らに何かを頼ることを幼い時にあまり経験できずに大人になるということです。一人で抱え込み、悩み、相談することも苦手な若者・・・・、近くにいませんか。

◾️おじいちゃん力、おばあちゃん力
「おじいちゃん力・おばあちゃん力」という言葉を聞いたことはないでしょうか。明治・大正や昭和の初期や時代は、大家族で暮らしていたので、母親が仕事の時は、おじいちゃん、おばあちゃんが子供の面倒を見ていたのです。また、親と子の間に何か衝突があったとしても、同居しているおじいちゃんやおばあちゃんが間に入ってこれを緩和してくれたのです。

そもそも、生物学的に考えれば、おじいちゃん、おばあちゃんが、自分の子育ても終えたのに、なぜ80歳くらいまで生きるかということを考えればわかります。つまり、30歳までに子供を産んで、その子が成人する時に50歳、そしてその子がさらに子を産んで孫ができるのは、60歳くらいでしょうか。

そこからさらに20年も寿命があるということは、自分の子が産んだ子、つまり、孫が成人するまでの子育てにもおじいちゃん、おばあちゃんには役割があるということなのです。

子供が成人するまでに必要なのは、そもそも生物学的に見れば、両親だけではなく、おじいちゃん、おばあちゃんも必要であるということだと私は思っています。そして、偶然なのかどうかはわかりませんが、近年の晩婚のせいで、高齢者の寿命は、それに応じて、しっかりと自分の孫の子育てができるように伸びているのです。

◾️孤独な子供たち
現代では、核家族化が進み、こうした「おじいちゃん力、おばあちゃん力」を借りることができないばかりか、女性の社会進出の扉も開かれているため、保育園や学童を利用しての共働き世帯も多いのです。むろん、母親も子供と一緒にいたい気持ちも大いにあると思います。

しかし、都会で子供を抱え、夫、妻、子の20代の家族で、妻が専業主婦できる夫婦は一握りではないでしょうか。ですから、子供はますます孤独になるのです。

その影響はどこに出るのでしょうか。ある研究者によると、無差別殺人や凶悪犯罪が増えてきた原因の一つが、犯人が幼少期に、孤独感を味わっていたのではないかという仮説があります。それは、親が近くにいないため、幼少期にすぐに親に頼ることができず、結局、大人になってからも、身近な人に相談することが苦手になっているのではないかという仮説があります。

西欧の狩猟民族と東洋の農耕民族との違いの観点から、また、異文化の観点から考えれば、単に、外国からの圧力で人権や女性の社会進出を容易に受け入れることも果たしてそれでいいのかと思うことがあります。そもそも、メンタルプログラム(国民文化)が違うからです。

江戸時代に日本を訪れた外国人の旅行記を読めば、わかるのですが、当時の日本人は決して豊かではありませんでしたが、実に日々を楽しく、平和で協力しあって生活していることが多く書かれています。ひょっとしたら、日本民族は、夫が懸命に家族のために働いて、妻が子育てし、家庭を守り、おじちゃん、おばあちゃんがそれを手伝うという、昔の農村の大家族のような姿が本来の生物学的な動態なのかもしれません。

単に西欧化することが全て良いのではなく、「部品交換型文明」(鈴木孝夫氏)と言われるように、明治時代に日本人が西洋の良いところだけを取って、日本人に合う社会を作ろうとしたように、今一度、自分達のルーツや歴史を振り返ってみてはどうでしょうか。とにかく、将来ある子供たちがたくさんの愛情を受けて、豊かな子供時代を過ごせるようになってくれればと思います。

例えば、高齢者といえど、今は、とても元気な方々が多く、しかも、時間を持て余しています。かといって、雇用があるかというと極めて限られています。そうした元気なお年寄りに学童や保育園といったところでお手伝いしてもらうことも一つの方法です。

ただ、資格や法律といった障害があるでしょうから、地域コミュニティーで積極的に高齢者と子供のふれあいを持つといったアイデアもあります。既に取り組まれてらっしゃる自治体もあるでしょうが、現代では、リモートで地方のお年寄りがメンターとして子供たちと触れ合うこともできます。

これは企業にもいえます。ベテラン社員として70代の社員をフルタイムではなく、若手社員の相談相手として積極的に雇用することも方法です。とにかく、元気な高齢者を活用して働くママをサポートして、子供たちに孤独な思いをさせない社会づくりを江戸時代の日本のように、共同体としできないものかと思います。

孤独な子供たち” への2件のフィードバック

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