業務改善は、利益の増加、つまり、売上収益の増加、あるいは費用の削減が効果として評価されます。ここでは、「効率」という側面でお話します。会社立ち上げに伴って組織は大きくなっていきます。成り行きに任せて、ビジネスの拡大とともに組織を大きくしていくと必ず無駄が発生します。つまり、業務の重複、担当部門、担当者のスキルの違い、情報・モノの流れ、また、次工程へ受け渡すモノ・情報内容の変化が生じて、それらの変化に組織が追いつかず、うまく回らなくなってしまいます。
多くの場合は、業務の効率化を図り、コストを低減、あるいはゼロにすることを目標として業務改善活動が始まります。私の経験では、業務改善導入の初期段階では、特に成長段階にある組織では、規律化、組織化が不十分であるためにに生じる無駄が問題となっているケースがありました。つまり、ルールが無いために毎回、社員が右往左往してしまうのです。単に担当者を決めて教育しマニュアルを作れば解決するのに、決まった担当者がいないのです。違う言い方をすれば、「あたりまえのこと」がされていないということです。
たとえば、請求書を発行する時に第三者がチェックせず、そのまま送付してしまうため、請求内容のエラーによるお客様からのクレーム対応に時間がかかってしまうことがあります。あるいは、各担当部署が売上データを報告書として出しますが、週間単位で報告するA部門と、10日単位で報告するB部門があり、全社での進捗度合いを第三者が比較分析するのに、レポートの算出期間が異なるためまとめるのに時間がかかってしまうということもあるでしょう。
つまり、問題とされていることの事実さえ明らかにされれば、「なあ~んだ、じゃあ、こうしようか」で済むような問題が多いのです。そして意外にその改善効果も大きいものです。こうした問題は初期段階においては多く存在しています。改善導入の初期段階における問題は、対策案も比較的単純なものが多く、投資もかからないため、改善は推し進める経営幹部のリーダーシップや本気度に左右されます。
一方、ある程度の業務改善が進んでおり、安定し成熟した組織では、規律化も進んでいるため、担当者の人間関係や組織の役割分担が原因となって安易に解決できる問題がだんだん少なくなってきます。こうした環境で、さらに改善を推し進めると、問題の大小にかかわらず、業務改善をすることが目的になり、目的と手段が混同され、改善のための改善となったり、重箱の隅をつつくような問題を挙げていくことになったり、次第に社員も疲弊しモチベーションも下がっていくので注意が必要です。
ですから、改善を導入する場合、時間対効果をもっとも得られるのは、組織の大小にもよりますが、改善活動を導入してから、最初の1年~2年程度がその成果が大きくなります。以降は、同じアプローチで推し進めても、労力の割に改善効果も次第に減少していくのです。従って、初期の段階で、一斉に全社を挙げて、強いリーダーシップのもとで改善活動を行うことは、効果が非常に大きいのです。そのためには、トップの意欲とリーダーシップ、本気度が大切になります。